ぜんばんは
ぜんぜんです。
今回は溶接管理技術者1級でよく出てくる溶接欠陥3つについて
原因と対策を書いていきます。
溶接管理技術者1級の資格試験については以下の記事を見てください。

溶接管理技術者1級では問題6~8でよく出るので
それぞれの原因と対策は覚えておきましょう。
高温割れ
高温割れの原因
オーステナイト系溶接金属は、凝固過程において、最終凝固部に
低融点不純物PやSなどが凝固時のデンドライト樹間やオーステナイト粒界に偏析し
凝固収縮ひずみが加わって発生する。
収縮応力との相互作用により高温割れを生じやすい。
高温割れの対策
オーステナイト組織中に数%の(デルタ)フェライトが存在すると、
割れを軽減または防止できるので、
溶接金属中に(デルタ)フェライトを5%以上含むように
溶接材料の組成を調整したものを選択する。
低温割れ
低温割れの原因
低温割れの原因は主に3つです。
①溶接部の拡散性水素
②溶接部の硬化組織
③残留応力
低温割れは、炭素鋼、高張力鋼やCr-Mo低合金鋼などの
溶接部(溶接熱影響部)が急冷で硬化して、
溶接金属中の拡散性水素がこの部分に集積して発生する。
硬化には、溶接金属、母材の化学成分が影響する。
拡散性水素は溶接棒のフラックスの水分や、開先面の汚れ、水分などが影響する。
溶接部の硬化には溶接割れ感受性組成(Pcm)が提案されている。
Pcm値に溶接金属中の拡散性水素量と板厚の影響も考慮した
溶接割れ感受性指数(Pc値やPw値)が溶接熱影響部の割れ性評価に利用される。
溶接金属は溶接時に多量の水素を吸収できるが
温度の低下と共に溶解度が低くなるため放出される。
温度が低く残存した水素が硬化部に集積すると低温割れが問題となる。
低温割れの具体的な例としては
施工時の気温が低い場合などで厚板で小さな入熱の溶接を行うと
溶接部が急激に冷やされるため
硬さが硬くなると同時に、じん性の劣化が進行して低温割れを引き起こすことがある。
低温割れの対策
①拡散性水素量を減少させる
低水素系被覆アーク溶接棒を用いて溶接する。
開先面の水分除去、溶接材料を乾燥させる。
②硬化組織を防ぐ
冷却速度が速いと金属組織の硬化や割れが発生するので
予熱を行い、冷却速度を遅くする。
③残留応力を除去する
溶接後熱処理(PWHT)を実施する
粒界腐食
粒界腐食とは金属や合金の結晶粒界に発生する局部腐食であり
粒界腐食が発生すると材料の強度が大きく低下するなどの問題が出てくる。
結晶粒の脱落により減肉速度も金属の溶解のみの場合よりも大きくなる。
粒界腐食の原因
溶接の熱影響部で結晶粒界付近のCr(クロム)がCr炭化物をとなり消費され
粒界に隣接するCr量が低下して、ステンレスの不働態を維持できなくなる。
粒界腐食の対策
Cr炭化物を分解する。
結晶粒内からのCrの拡散によって結晶粒界のCr欠乏をなくすため後熱処理を実施する。
C量の低いL材を使用する。
Cと安定な化合物を生成させてCrとCの結合を抑制するために、
Cとの親和性の高いTiやNbを添加したSUS321やSUS347の使用などを使用する。